ろじうら小道

日々のつれづれ。

神社巡りを始めたきっかけの話

私が神社を巡り始めたのは、端的にいえば、術後の母のリハビリが主目的でした。

だから神社へは今でも母と一緒に参拝することが多いです。

 

母と手術と

一昨年の冬に脳出血で倒れた父の介護と家事、仕事。

それらを全て両立していた母は、相当に無理をしていたのでしょう。本人が弱音を吐くよりも前に体が悲鳴を上げたのだと思います。

それでなくとも10年前にガンを患った経験のある母です。10年間再発が無かったからもう安心だね、と話していた矢先の出来事でした。幸いにもガンではありませんでしたが、長い検査入院の後、良性の腫瘍らしいが神経を圧迫しているので、頭部の手術が必要だと主治医の先生に言われました。

手術は成功しました。

朝の8時過ぎから始まって、「無事に終わりましたよ」と呼ばれたのが夕方の5時頃。手術の説明をしてくれた先生が疲れた顔をしていたことを覚えています。

翌日お見舞いに行ったとき、母は笑っていましたが、見るからに病人然としていてフラフラな感じでした。

「よく休んでね」と言って長居せずに病院を後にした私は、その帰り道、久しぶりに神社を訪れました。今思えば何かに縋りたかったのかも知れないし、それ以上に、懺悔のような気持ちを誰かに聴いて欲しかったんだと思います。色んなことを母に任せ、無理させてしまったという後悔を。

それは水辺にある小さな神社で、参拝後近くのベンチに腰を下ろしてしばらくボーっと辺りを見ていたのですが、特に何かイベントがあるわけでもない平日の昼間にも関わらず、ぽつぽつと参拝者がやって来ていたのが印象的でした。

これが2017年、秋のことです。

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はじまりは明治神宮

無事に退院した母でしたが、年が明けてもしばらくは自宅で静養していました。

それでも母は根っからの真面目人間なので、自宅周辺からコンビニ、駅前のスーパーへと、少しずつ行動範囲を広げていき、春も間近になると普通の生活が出来るようになっていました。とはいえ、当然術前と比べると運動量はめっきり落ちていたので、母としてはそれではいけない、と思っていたようです。

そこで出た案が、散歩――もとい、神社巡りでした。

静かだし、危なくないし、意外と見るものが多く境内を歩き回ることになる神社という場所は、散歩には向いています。

母「私、ちょっと神社に行ってみたいと思ってるんだけど……」

ちょうどその頃、テレビで各地の神社を紹介する番組をやっていたようで、「最近はご朱印集めっていうのも流行っているらしい」と関心をもったようでした。

私としても元々神社は好きだし(そもそも古いものが好き+樹木に囲まれた空間が好き)、2、3年前くらいからジワジワご朱印人気が高まっているのは知っていたので、じゃあちょっと一緒に行ってみようかということになりました。

次に問題となるのは、どこの神社に行くかということです。

――さて、どこから始めようか。

せっかく神社巡りを始めるなら、御朱印も貰いたい。となると、まずは御朱印帳を入手する必要がある。今の時代、LOFTやAmazonでも可愛い御朱印帳は買えますが、少なくとも初めて持つものは神社で買いたい、というのが母と私の共通の意見でした。

ならば、御朱印帳を頒布している神社じゃなくてはならない。

体力的な問題から行って、あまり遠方の神社は無理だ。石段が急な場所も同様の理由で却下。家に車がないので神社までの交通手段は電車になるが、駅から神社までの距離も出来れば近い方がいい。

そしていきなり初めての場所に行くよりは、行ったことのある(ある程度勝手が分かっている)ところの方がいい、という話になった。手術が無事に終わったことに対する感謝、ここから再スタートしていきますという報告――そういうものを、はじめましての場所で行うのは何か違う気がしていたし、何より新しいことを始めるにあたっての精神的なハードルの高さが違う。

そういう諸々のことを勘案した結果、母と神社巡りを始めるための出発点となる神社が決まりました。

明治神宮です。

2018年、3月のことでした。

明治神宮へは家族で何度か初詣に訪れたことがあります。しかし正直にいって、その日はちゃんと参拝を終えられるか心配でした。だいぶ母が動けるようになってきたとはいえ、電車に揺られて乗り換えもし、原宿駅の混雑を抜けて、神社の境内に入ってからも長い長い参道を歩かなくてはならないからです。

しかしそれは杞憂でした。

術後、母があんなに遠出をしたことは無かったので、恐らくすごく疲れたのは確かだろうとは思うのですが、同時に「やり遂げた」ということが自信につながったらしく、そこから母はどんどん元気になりました。

もちろん思うように外出できない時期もありましたが、最近は二人で折を見て神社巡りを楽しんでいます。

 

一年が経過して

母の手術が終わってから丸一年と少しが経ちました。色々と環境が変わった面もありますが、母を含め、家族が無事にこの一年を過ごすことが出来たので、今年は落ち着いた気持ちで年の瀬を迎えることが出来ています。

一昨年、去年と比べて、今年は楽しい年でした。色んな場所に行くことができ、色んな経験が出来ました。

家族ブログでもないのに長々と身内のことを書くのはどうかと思ったのですが、ちょうど一年を振り返る時期だし、これを書くことで自分の中で一区切り付けたいという気持ちもあったので、今回「神社巡りのきっかけ」となった話を書きました。思ったよりも長くなってしまってちょっとビックリです。

一区切り、という表現を使いましたが、もちろん神社巡り自体は来年も続けていきたいと思っていますので、度々記事にもすると思います。丹頂ミクさんシリーズを見ていただければ分かるように、神社系記事だけを切り取ってもあまり硬派なスタンスのブログではありませんが……少しでも楽しんでいただけたら幸いです。

ここまで読んでくださった方へ沢山の幸がありますように。

よいお年を。